久しぶりにブログをしたためる、開発部のフヂです。
おかげさまでこのたび「ハイブリッド真空管アンプキット “CUBIC kit”」TU-H82が発売の運びとなりました。そこで開発裏話を中心にご紹介したいと思います。
ご存じの方も多いと思いますが、以前、同種のキットにTU-H80がありました。TU-H82はその後継機ではありますが、外見も中身も一新しています。
女性デザイナーによるキュートなキューブ形で、そのうち半分が前後方向に吹き抜けになっていてユニークなデザインで、色はシルバーとしました。ボリュームツマミはアルミシェルタイプです。
目指したのは小形軽量化ならぬ小形重量化。デスクトップの傍らに置いて邪魔にならないサイズを… しかしそれに反して、重量化して欲しいとの強いご要望もありました。アルミボディで軽量だったTU-H80は、何本もの太いケーブルが接続されるとアンプ本体がケーブルに振り回されてしまうからです。筐体容積はTU-H80の約77%に小形化されていますが、筐体に厚めの鉄板を採用して、本体重量は約2倍の790gになりました。ズシリとくる重量感があります。
スピーカー出力のターミナルは、TUシリーズ上位機種に使用している金メッキのバインディングポストを採用しています。実は高級感を狙ったというよりも別の理由が… なにしろ、フロント、リアのパネルサイズは本体の半分の大きさしかない、エンジニア泣かせのデザインで、台座が付いた4Pターミナルではリアパネルにうまく収まりきれなかったからです。でもバインディングポストは結構重いので、これも小形重量化に貢献しています。そして、このポストと内部基板との接続・固定方法が「コロンブスの卵」的でちょっとビックリかも知れません。それは組み立ててのお楽しみ!
機能面では、皆様からの強いご要望だったヘッドホン出力の追加ができました。実はTU-H80に使用しているD級アンプICにはヘッドホンアンプ回路も内蔵されていましたが、前段に真空管を使っているがゆえにどうにも不都合な面があり、その利用を見送っていました。また出力レベルがかなり高い音源機器を接続した場合に、TU-H80では段間でクリップしてしまう事例もあったため、TU-H82では回路構成、ICも全面的に見直しました。色々と評価の末12AU7+TPA3004D2(TI社製)の構成に落ち着き、音質もかなり良いものに仕上がりました。視聴していただいた方々からはTU-H80より向上しているとのご感想をいただきます。
ちなみに、12AU7の代わりに12AT7も特性上使えそうだと試してみたところ、手持ちの球では全く問題なく使用できました。なお12AX7はHigh-μ管で所定の電流が流れてくれず使えませんのでご注意を。
ところで、このサイズのアンプだとPCにつないで使うことが多いので、なんとかUSB-DACを内蔵できるようにと考えていました。当初は「ミニUSB-DAC」PU-2111をオプションとして組み込めるように検討していましたが、スペース不足でうまいレイアウトや接続方法が見つからず、「ええい、標準装備にしてしまえ!」とあいなりました。
以前TU-H80にムリヤリUSB-DACを組み込んだ記事を書いたことがありますが、実際に自宅でPCにつないで使うと結構な確率でアンプの電源を切り忘れます。そこで、同じ記事の後半でTU-8100に組み込んだ「USB電源連動機能」をTU-H82に導入しました。PCの電源に連動してアンプも自動でON/OFFしてくれて、かなり便利です。なお、この機能が邪魔な方もおられるでしょうから、この機能のON/OFFスイッチも設けました。
最後に、説明書にも載せていない裏仕様(?)をひとつご紹介しておきます。フロントに付いている入力とヘッドホン出力のミニジャックには、実は今回4極ジャックを採用しました。なので、スマホを音源にして、入力ケーブルに4極プラグコード、ヘッドホンもマイク付きの4極プラグ式を使えば、音楽鑑賞中に電話がかかってきてもそのまま通話ができちゃうはずです…(まだiPhoneでしかテストできていませんが)
手前がTU-H82、奥がTU-H80。周囲に写りこんでしまっているフィギュアやミニチュアは商品には含まれていませんので、ご注意ください。