電子工作で基板やケーブルの配線をするときにはんだ付けをしますが、たまに「ショートしちゃった」「いもはんだになっちゃった」などのようにはんだ付けを失敗してしまって手直しをしたいときが初心者でもベテランでもよくあります。
はんだ付けを初めたばかりのときは「ちょっとでもはんだがくっつけばいいんでしょ?」と思われるかもしれませんが、はんだ付けにも良い状態・悪い状態があります。
例えば…
↑これは「良いはんだ付け」です。
基板の銅箔と部品の足にまんべんなくはんだがついていて富士山のような形に盛り上がっていればカンペキです。
↑一方これは「悪いはんだ付け」です。
部品の足だけに熱を加えたために基板の銅箔にハンダがついていません。これでは接触不良でうまく電気が流れません。このような形のはんだは「いもはんだ」と呼ばれます。
他にもいろんな「悪いはんだ付け」がありますので、ぜひこちらをご覧ください。
よくあるご質問 – 「良いはんだ付け」と「悪いはんだ付け」とはどのようなものですか。
https://www.elekit.co.jp/support/faq/1212
では、こういう「悪いはんだ付け」をしてしまったらどうすればいいでしょう?
実はこんなときのためにとても便利な工具があるのです。
今回ご紹介するのは「はんだ吸い取り線」「手動式はんだ吸い取り器」「ヒーター付き手動式はんだ吸い取り器」です。
これらの工具を使うと…
このようにはんだを除去することができます。
(1)はんだ吸い取り線
極細導線をテープ状に編んでフラックス(はんだの中に入っているヤニ)を染み込ませてあるもので、はんだを吸い取りたい部分にはんだごてで押し当てて使います。
早速、はんだを取り除いてみましょう。
みるみるうちにはんだが吸い取り線へ吸い取られましたね。どうやらこのしくみは「毛細管現象」というものを利用しているようです。
ただし、はんだごての先が細くとがっているものだと熱が伝わりにくく、うまくいかないことがあります。そのときは、こて先を「点」で当てるのではなく、はんだごてを寝かせて「線」で当てるようにするとよく熱が伝わるようになります。
価格は200~300円くらいでとても安いです。
goot はんだ吸取り線 CP-2015
https://www.amazon.co.jp/dp/B001PR1KPG
(2)手動式はんだ吸い取り器
注射器にバネを着けたような構造の器具です。ピストンを押し縮めるとロックし、ボタンを押すとバネの力でピストンが一気に引き上がられて吸い込むようになっています。
はんだを吸い取りたい部分をはんだごてで溶かし、溶けている間に吸い取ります。
それでは、はんだを吸ってみましょう。
お見事。一瞬のうちに吸い取られてしまいました。
吸い込むときは周囲の空気を一緒に吸い込むため冷却されてはんだがあっという間に固まってしまう
ので、作業はスピードとコツが要求されます。
はんだごてを離してから吸い取り器を当てても全然間に合いませんので、ずっと温めて溶かし続けている状態で吸い取る必要があります。
価格は1,000円~2,500円くらいです。
goot はんだ吸取器 GS-108
https://www.amazon.co.jp/dp/B0016V5KHU
(3)ヒーター付き手動式はんだ吸い取り器
先程の(2)では、はんだごてを当て続けながら吸い取り器ではんだを吸い取る必要があり、場合によってははんだを除去するのが非常に困難になることもあります。いかにはんだを溶かしたまま冷やさずに吸い取るかがポイントになってくるわけです。
そこで生みだされた工具がこの「ヒーター付き手動式はんだ吸い取り器」です。なんと、「はんだごて」にそのまま「はんだ吸い取り器」をくっつけてしまったものです。
最初見たときは「昭和の合体家電かよw」と思ってしまいましたが、実はこれがとても便利なんです。
吸い取る様子はこちら。
このように、一本の工具で加熱から吸い取りまでできてしまいました。温めたまま吸い取ることができるため、はんだが冷える間もありません。素晴らしいですね。
価格は5,000円程度と個人でも購入しやすいので、はんだ付けをよくする方は「一家に一台」と唱えることもあります。
サンハヤト はんだシュッ太郎NEO 45Wタイプ HSK-300
https://www.amazon.co.jp/dp/B01FEV2BPG
この他にも「電動式はんだ吸い取り器」という加熱しながらポンプのはたらきではんだを吸い取るものもありますので、興味のある方は調べてみてください。ちょっとお高いですが、とても便利です。
「結局、どれを買えばいいの?」と悩んでる方はとりあえず(1)のはんだ吸い取り線と(2)の手動式はんだ吸い取り器の2つを買いましょう。これら2つは場合によって使い分けることがありますので両方揃えるのをおすすめします。
(3)のヒーター付き手動式はんだ吸い取り器はプリント基板のはんだ付けをたくさんするようになったらぜひ買っておきましょう。(1)と(2)では難しいスルーホール内のはんだの除去をするときに大活躍します。
はんだ付けではミスをしないことも大切ですが、ミスはベテランでもするものです。ミスをしたときに長時間はんだごてを当て続けると、基板のパターンが焼けたり電子部品が熱の加えすぎで壊れてしまったりすることもあります。
こういった失敗をした箇所をうまく修正する技術も電子工作ではとても大事なので、ぜひたくさん失敗と修正を繰り返しながら練習してみてくださいね。
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