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多極管シングルパワーアンプキット [ TU-8850 ] リリース!

こんにちは、開発部のフヂです。
大雨、連日の猛暑、遅くて迷走したり近畿東海直撃の台風など、今年は大変な夏ですね。被災地の皆さまには心よりお見舞い申し上げます。

さて、9月中旬にオクタルベース(US 8ピン)のメジャーな出力管がいろいろ使える 多極管シングルパワーアンプキット [ TU-8850 ] がリリースされる運びとなりました。

まず外観は、300B/2A3 用の当社フラッグシップモデルともいえる TU-8900 とお揃い(筐体は共用)。プリアンプの TU-8550 との相性もバッチリです。

機能的には、似た機能の TU-8800 が2019年の秋に限定モデルとして発売されたことがありましたが、今回のモデルはその兄貴分ともいえる内容となっていますので、比較しながらご紹介したいと思います。

TU-8800 もいろいろな出力管が使用できて KT120 では最大(10%THD) 12.5W ×2 ほど出るアンプでしたが、その後 KT150 や KT170 など更に大形の球が出回るようになり、それらの実力を発揮できるアンプのご要望が多くなりました。今回の TU-8850 は KT150、KT170 使用時に 16W ×2 ほど出せるアンプです。ただし、このようにハイパワー側にシフトしたため使用可能な出力管は 6L6相当からとなります。(6V6 や 6F6 等には対応していませんのでご注意ください。)

それから TU-8800 には KT88 と プリ管が付属していましたが、色々な球を差し替えて愉しむアンプには付属しないほうが良いという声を多くいただいておりましたので、TU-8850 は「球なしキット」となっております。お手持ちの球をご活用ください。また、本機用のプリ管は 12AU7 (ECC82, 6189) 2本です。

使用する出力管に合わせて切り換える「パワーモード」は TU-8800 と同じく3段階なのですが、内容はグレードアップしています。TU-8800 では B電圧の切り換えが2段階、バイアスの切り換えが2段階で、その組み合わせによって3段階を実現していたのですが、TU-8850 ではどちらも3段階の切り換えとなりました。なお、バイアス方式は「オート式、固定式のいいとこ取り」で定評のあるアクティブオートバイアス方式で、球種が変わってもカソード電流をほぼ一定に保ちます。

 使用できるおもな出力管は製品情報ページなどにも掲載していますが、ここではそれ以外のお手持ちの球が使用可能かどうかの判断材料として、パワーモードの各ポジションでのプレート電圧とカソード電流も併記したいと思います。

ここで注意するべきことは、TU-8850 は 8800 と同様、UL (Ultra Linear) または 三極管 (Triode) 結線動作のアンプなので、スクリーングリッド(第2グリッド)にもプレート電圧に近い電圧がかかることです。したがって、使用の可否を球のデータシートで確認する場合には、プレートについてではなくスクリーングリッドに着目してください。(たとえば ”MID” で使えそうな WE350 が “LOW” になっているのはその制限からです。)   データシートに三結(Triode connection)時の設計最大定格(Design maximum rating) が載っている場合はそれを参考にするのが最も確実です。

カソード電流 = プレート電流 + スクリーングリッド電流  ですが、スクリーングリッド電流の割合は球種によっても異なりますが、大雑把にカソード電流の1~2割程度と考えておけば良いでしょう。

 

UL、三結(Triode) の結線モード切換スイッチも踏襲していますが、これも少しだけ進化しました。結線モードは切り換え時に原理的に強烈なノイズが発生することがあるのですが、TU-8850 では大幅にやわらげる工夫ができました。あくまで「電源を切った状態で切り換える」ことを推奨しますが、うっかり通電中に切り換えてしまってもビックリすることはなくなりました。

 

最後に、TVCMの「誰も気にしていないこの緑色 (ソルダーレジスト)」的な、基板の裏話を。TU-8850の基板のソルダーレジストも緑色を採用しましたが、それよりもっと重要なのは導体である銅箔ですよね。基板の銅箔の厚みは従来は 35μm(ミクロン) が標準でしたが、電子機器の小形化が進む昨今は 18μm が標準となってきており、オーディオアンプには向かない方向になってきています。 ですがっ、「誰も気にしていないこの銅箔の厚さ」、TUシリーズ上位機種には人知れず(笑) 70μm を採用し続けております!  以後少しでも気にしていただければ嬉しいです。

 

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