少し前の話になりますが、先々週、東京ビッグサイトにて開催された「教育ITソリューションEXPO(EDIX)」を視察しました。昨年も視察したのですが、「学びNEXT」ゾーンを中心に、大幅に拡張され、会場は大変な熱気にあふれていました。
さて、今回の目的のひとつは、次期学習指導要領改訂に関する講演会に参加することでした。
関連する講演会にいくつか参加しましたので、今回は聴講した内容を私なりに整理してみます。
現在議論されている教育改革は3つです。明治維新以来の教育改革とあって、いずれも注目が集まっています。
- 学習指導要領の改訂
- 教員の育成・研修の見直し
- 高大接続(大学入試改革)
これらのうち、当社と関係が深い学習指導要領の改訂、中でも小学校の「プログラミング教育」を中心に、背景や意義についてまとめてみます。最後に、学習指導要領改訂と当社の考え方の関係性についてまとめていきます。
今回の学習指導要領の改訂のポイントはこのスライドにまとめられています。
出典:文部科学省「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめとポイント」
ざっくり言うと。
- 根本にあるのは、「社会に開かれた教育課程」。不確実性の高い、新しい時代をサバイブしていくための教育課程であるということ
- そのとき、より重要性を増してくるのが、情報活用能力。すなわち「プログラミング的思考」を養うためのプログラミング教育
- 新しい時代に求められる資質・能力を育成し、質の高い理解を図るための主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)。それを実行・運営していくための各学校におけるICT環境の整備。各学校における教育用コンピュータの整備目標台数は、3.6人に1台(ちなみに昨年3月時点では6.2人に1台。アメリカは3.1人に1台が整備済み)
今回の学習指導要領改訂の背景には、「第4次産業革命」ともいわれる人工知能の進化をはじめ、変化が激しく将来の予測が困難になってきたことがあります。こうした時代背景を踏まえ、子どもたちが自信を持って自分の人生を切り拓き、よりよい社会を創り出していくために、いよいよ政府が明治維新以来、実に150年ぶりに、本腰をあげた教育大改革です。
ある講演会では、中でも「情報活用能力」が、これまで重視されてきた「言語能力」と同程度に重視されるようになったことが、重要なポイントのひとつであると語られていました。
そこで、情報活用能力≒プログラミング教育の在り方については、こちらのスライドにまとめられています。
出典:文部科学省「小学校段階におけるプログラミングの在り方について(議論の取りまとめ)」
まず、前提として、プログラミング教育とはコーディングを覚えることではない、と明記されていることは重要だと思います。世の中の子どもたち全員がITエンジニアを目指しているわけではないのに、なぜわざわざプログラミング教育なんだろう?と不思議に思われている方も少なくないと思います。恥ずかしながら、私もそのひとりでした。。
プログラミング的思考を養うためのプログラミング教育ですが、そのプログラミング的思考とは何かというと、次のように記載されています。
”自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組み合わせが必要であり、ひとつひとつの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組み合わせをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力。”
ある講演会では、プログラミング的思考をどのように実践していくか、プログラミング思考とは何かを理解するために、いくつかお話がありました。
- 防災意識を高めることを目的として、災害時、身の安全を守るために、自身の行動をステップ化して考えてみるワークショップを実施した、ある小学校の事例
- 並列回路において電流が分岐することと光の屈折という別々の現象を「最小作用の定理」を使って、整理しなおしてみる
こうしたお話を聞いて、
- 所与の情報を整理する
- 情報を整理して構造化する
- 構造を俯瞰して抽象化する
このような一連の活動がプログラミング的思考なのかなと理解しました。なるほど、プログラミングを学ぶための教育ではなく、”プログラミング的に”思考する考え方を学ぶための教育なわけです。新しい思考法を学ぶための教育、と言えるかもしれません。そのようなプログラミング教育にあって、プログラミングを学ぶためのキット・教材は手段でしかありません。
これまでの社会では、人生には目指すべきモデルがあって、自然と人生設計できていました。ところが、現代社会では、何をやったら「合格」、「100点」がわからない中で、人生設計していかなければなりません。“実現したい自分になるための道筋を自分で設計”するための、プログラミング思考であると認識しました。
プログラミング的思考は、子どもたちだけではなく、私たち大人にも求められているように思います。
言いたいことを整理して相手にわかりやすく伝えること、大量のデータを取得することだけでなく、そこからビジネス的なインプリケーションを得ること、目の前の課題を列挙して優先順位をつけてひとつずつ解決していくこと、これらすべて、プログラミング的思考と言えるのではないでしょうか。
このような学習指導要領改訂の方向性について、当社としては、“ものづくりを通じた新しい「教育」”をスローガンとして掲げるなど、積極的に歓迎したいと思っています。
ただしながら、当社の思想は、いまもむかしもこれからも変わることがありません。キットを手順通りに組み立てる。組み立てて動かなければどこがうまくいっていないのか原因を特定する。キットに使われている機構や技術、科学的な要素が実社会でどのように活かされているか考える。こうしたことは、次期学習指導要領に記載されていることそのものではないかと思っています。
また、キットをつかって学ぶとはどういうことか、動画などを通じて積極的に発信していきます。キットに様々な情報という付加価値をつけて、キットをつかった学びを促進していきます。さらに、今年度はこうした方向性により尖りを持たせ、かつ次期学習指導要領にも対応可能な「新しい学びシリーズ」として、ふたつの商品をリリースする予定です。
今回の学習指導要領改訂は、明治維新以来の教育改革であると述べました。その背景には、子どもたちがこの不確実性の高い社会を生き抜く力を育成するということがあります。今回の教育改革によって、未来の子どもたちが「日本で教育を受けてよかった!」と思えるような教育改革になればいいなと思いますし、少しでも実現に近づけるように、これまで以上によいキットを開発してまいります。