開発よもやま話

ファブウォーカー共同開発者 山岡潤一先生よりメッセージをいただきました

ファブウォーカーの発売おめでとうございます。

プロジェクトが発足したのが3年前くらいだったと記憶しております。

このファブウォーカーの開発の歴史を振り返ると、私が大学院生の時に制作したアート作品が元になっています。WalkingTreeという作品でして、木の枝を付けることで初めて歩きだすというロボットキットでした。これは、室内で作るのではなく、森に出てロボットを組み立てようという願いを込めて作りました。また、教育的には、完成して終わりではなく、考える余白を持たせたロボットキットにしたいと考えていました。

このWalkingTreeは、インドで展示をして、インド特有の独特な植物を付けたインドバージョンになったり、東日本大震災後の福島県に持っていって、子どもたちに遊んでもらいました。

WalkingTree

 

その後、ファブラボ鎌倉の渡辺ゆうかさんの提案で、Fabbleというハードウェアのレシピをオープンにしてシェアするサイトに、このWalkingTreeを発展させた知育玩具を公開しないかというお誘いを受けました。そのときに名前がファブウォーカー(当時は英語表記でFABWALKER)に決まりました。オープンハードウェアは、作り方をすべて公開することで、誰かが改良し、さらに改良したバージョンをさらに公開していくという、ある種のリレーのような感じで開発が進められていく面白い考えであります。さらに、進化の系統樹のように、形は徐々に変化していきながら、ハードウェアが進化していきます。

Fabble – Fabwalker:https://fabble.cc/jun1chi/fabwalker

 

その後、 イーケイジャパン様もプロジェクトに参加して頂き、三者でミーティングを重ねながら、ワークショップで使うようなパッケージングについての議論を行いました。初期の頃は、大人向けのワークショップなども行って、色々な意見を貰いながら、キットへ反映させていくことができました。最終的には、エレキットバージョンは、レーザーカッターで切り出したボディ、プログラミングできるソフトウェアの開発、組み立て方のインストラクションなど、これまでの知育電子玩具の開発技術を駆使して、素晴らしいロボットキットにしていただけました。

 

またファブラボ鎌倉では、総務省のプログラムに採択され、山口県の小学校で”一億年後の生き物を考えよう”というテーマのワークショップを企画していました。同じコンセプトなんだけれども、異なるアプローチでキットを開発して、ワークショップを行っていく。まさにオープンハードウェアならではの、多様性を見ることができました。

 

私も、このようなオープンハードウェアの多様性は、研究的にもとても意義があると思い、研究成果として学会で発表を行いました。

(参考:山岡潤一, 渡辺ゆうか: ”FabWalker:”歩き方”をデザインする学習用ロボットキット”,第38回 情報処理学会エンタテインメントコンピューティング研究会,(2015.12).

 

さて、子どもたちには、このファブウォーカーを使って、考える大切さを身に着けてほしいと思っています。単純に組み立てて終わりではなく、考える余白をあえて残しているのが、このキットの特徴であると考えています。どうしたら上手く動くのか、ハードウェア的にもプログラム的にも改良していく。目的に応じて、機能をデザインすることが重要であります。

さらに失敗する大事さ。試行錯誤の大事さ、なぜきちんと付けたのに歩かないのだろうか、足の付け方かプログラムの問題か、色々実験しながら完成に近づくことを体験してほしいと思っています。

 

さらにキットとして今後は、オープンハードウェアの面白さを広げていけたらいいなと思います。今回は私が原案を公開することで、多様性という広がりがあり、かわいかったり、ちょっときもかわいい動きになったりなど、最終的に異なる形の特徴が見られました。これはまさに新しい産学連携の形でもあるし、これからもこのような流れの中で、異なる団体や者同士が協力しあって一つの製品を作っていく形が重要なのかなと、感じることが出来ました。

 

山岡潤一

1988年生まれ。研究者、アーティスト。博士(政策・メディア)。東京大学大学院情報学環 特任助教、慶應義塾大学 非常勤講師。2013年、慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了、2015年同大学政策・メディア研究科博士課程修了。日本学術振興会特別研究員(PD)を経て現職。 手作業などの創造活動を支援するファブリケーションツールの開発や、バーチャルリアリティなどに関する研究に従事。UISTやSIGGRAPHなどの国際会議で発表。またフィジカルとデジタルを融合させたメディアアート作品を制作・発表している。WIRED CREATIVE HACK AWARD 2014グランプリ受賞 、TOKYO DESIGNERS WEEK ASIA AWARD2014デザイン部門準グランプリなど。

http://www.junichiyamaoka.net/

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください