2018年2月24日(土)に兵庫県にある園田学園女子大学にて行われた「氷上情報教育研究会/兵庫プログラミング教育学習会」に参加させていただきました。
氷上情報教育研究会は、兵庫県下の教員の方々が自主的に行っている研究会で、主に情報教育について活発な議論がされています。その歴史はいまから30年ほど前にも遡り、パンチカードやPC-8800シリーズなどと歩みを共にしてこられたとのこと。
兵庫プログラミング教育学習会は、昨年度発足した組織です。中植正剛先生(神戸親和女子大学)と、藤原典英先生(兵庫教育大学附属小学校)を中心に、2020年度からのプログラミング教育実施のスタートアップ支援を目的に学習会を開催しています。プログラミング教育についての理論的な学習を進めたり、会員が行った実践の共有・分析、授業に関するワークショップなどを行ったりしているそうです。
当日は若手の先生方からベテランの先生方まで幅広く参加され、研究会の歴史が綿々と受け継がれている様子が伝わってきました。私は午後のプログラミング教育研究会の部から参加させていただきました。
今回、研究会に参加させていただいたのは、兵庫教育大学附属小学校の藤原典英先生のお誘いによるものです。先生には国語科の授業でのプログラミング教育の教材としてPIECEを使用いただきました。
研究会ではまず、藤原先生よりPIECEを使った授業について、実践発表がなされました。
実践発表
授業は3年生の国語の時間に行われました。単元を「報告文を書こう~くらしの中のプログラミング」とされ、全7時間の授業で行われました。流れは次の通りです。
テーマ1 くらしの中のプログラミングを見つけよう
実際にPIECEを使って、自分たちの身近なところで似たような仕組みがないか考えていきます。PIECEには説明書・リファレンスカードが入っていますが、あえてそれらを渡さず、試行錯誤の中で自ら考えさせるようにされたとのことでした。試行錯誤はプログラミング的思考において大変重要な要素だと思います。使い方を教えるのではなく、実際に手を使って考えさせるというアプローチは素敵だと思いました。
子どもたちが使い方を自ら理解しはじめ、「振動するとメロディが鳴る」という装置をクラスで紹介したときのこと、ある児童が「それ、地震のときに役立つやん」と発したとき、先生は感激なさいます。先生は今回の授業設計にあたり、“プログラミングを自分自身の「くらし」に迫って考えられるようになること”にこだわられたとのこと。上の発言は、まさにプログラミングとくらしが結びついた瞬間であったわけです。こうした発言を受け、先生は「自分たちの生活に関係のあるもの、生活を少し便利にしてくれる回路を考えてみよう」と投げかけられ、授業はいよいよ報告文の作成にうつっていきます。
テーマ2 くらしの中のプログラミングを報告する文章を書こう
実際にPIECEでつくった装置をもとに報告文を作成していきます。まず、報告文を「はじめ・なか・おわり」という構造にわけ、それぞれの要素で何を書くかを議論します。
- はじめ:「何のためにこの回路を組み立てたのか」といった目的やきっかけ
- なか:問いに対する具体的な答えや例、実際に試して気付いたことや分かったこと
- おわり:「なか」を簡単にまとめて自分の考えを書く
途中、ある班では3人で1つの装置をつくったはずなのに、書いている目的(「はじめ」)が異なるということが発生します。「音か揺れを感知してメロディが鳴る」という装置に対して、ある児童は「地震のときにしらせてくれる」という目的で書いていて、またある児童は「目の不自由な方が回路の近くをさわったら何の部屋かを音でしらせてくれる」という目的で書いていたそうです。
たとえ同じモジュールの組み合わせでも、使う目的の数だけ装置の数はある。使う目的の数だけ組み合わせの数がある。これはとても面白い考え方だなあと感心しました。
テーマ3 くらしの中のプログラミングを広めよう
最後に報告文をブラッシュアップしていきます。自分の思いが伝わりやすく、内容がわかりやすい文章になるように、違う班の友だちと読み合い、意見交換をします。ここでは、特に「はじめ」を受けて「なか」の内容(特に、実際に試して気付いたことや分かったことの部分)を強くすることを改めて投げかけられています。そのため、自分たちのつくった装置が実際どのように動作するかを観察するため、擬似的な場面をつくり、実験していきます。
その中で、数名の児童から「いまはないけど、こんなモジュールがあるとして書いてもいい?」という質問が出たということでした。昨年、福岡雙葉高校で行ったワークショップでも、「連結するコードがもっと長くして、職員室前の掲示板で先生が在籍中かどうかを分かるようにする」というアイデアが出されました。仮定力とでも申しましょうか、「~とする」という考え方は、PIECEの“プロトタイピングを容易にする”という特長にも合致しているように思います。
「プログラミング教育は言語教育、ことばの教育」だとする先生の授業は、大変ユニークで大変勉強になりました。
続いて、当社代表より「PIECEと今後のプログラミング教育」と題して、講演を行わせていただきました。質疑応答では、現状のPIECEについて大変有益なフィードバックをいただきました。感謝です。
PIECEを使ったワークショップ
最後に、PIECEを使ったワークショップが行われました。若手からベテランの先生まで全く躊躇なく、ガシガシ触られている様子には、さすが情報教育を長年研究されている先生方だと感銘を受けました。
先生方からは、振動センサー⇒コントロール⇒モーターとつないで、「休み時間中、トントン相撲をしているうちに鉛筆を削ってくれる装置」や、振動センサー⇒タイマー⇒モーターとつないで、「泥棒が入ってきて、しばらくしたらモーターでドアを閉め捕まえる装置(侵入後しばらく泳がせておくことがポイント)」など、ユニークなアイデアを数々出していただきました。
ここで紹介した兵庫教育大学附属小学校以外にも、徐々にPIECEを使った授業事例が増えてきています。PIECEの輪が全国各地に広がっていること、大変うれしく思っています。
PIECEを使った授業をお考えの教職員の方がいらっしゃいましたら、まずはご遠慮なくお問い合わせください。
ELEKITウェブサイト ワークショップお問い合わせフォーム